2017年 02月 23日
六甲山の土壌性甲虫 |
久々に六甲山系にやってきた.
日本甲虫学会の会長サマが言っていた.「東京の皇居は外観はうっそうとした森が広がっているが,土壌性甲虫,特に飛翔能力を欠く種がほとんどいない.それは一度江戸時代の大火事で森林が丸焼けになり,土壌性甲虫は大打撃を受けた.しかし,地上部の森林は数十年で復活しても,後翅がない種ないしはグループは,既に都市化していた江戸の周囲から再侵入できなかった.それで今も皇居は後翅を欠く土壌性甲虫種がほとんどいないのだ」と.
上記のことは会長殿が中心となってまとめた「皇居の昆虫相」とかいう冊子で述べられていること(=引用可能)なのかどうかは知らんが,説得力がある.
これとは逆に,人の手がさかんに加えられているにもかかわらず,オリジナルの土壌性甲虫が温存されていると思うのが神戸市六甲山系だ.六甲山系内の主要山の一つが摩耶山である.この摩耶山には Agathidium (Agathidium) katsuragiae や Agathidium (Neoceble) funereum など後翅を欠く土壌性種が多い.摩耶山に元々生えていた原生の森林なんぞほとんど残っていないだろう.しかし,ここには本来の摩耶山が持っていた土壌性甲虫相が残っていると考えられる.
憶測にすぎんが,摩耶山原生の森林は一気に失われたのではなく,少しずつ二次林に置き換わったのではないか.土壌性甲虫種は落葉層の湿度等の状態に強く影響される一方で,地上部の樹種が何であるかはあまり関係がない.ブナだろうがコナラだろうがクルミ類であろうが,森林を構成する主要樹種が広葉樹であれば,その下の落葉層にいる土壌性甲虫の種構成は樹種の影響を受けない,ということは珍しくない.
完全はげ山になることなく部分的に木が切られ続け,最終的には原生樹種がゼロになり100%二次林に置き換わっても,オリジナルの土壌性甲虫は温存される,と言うのは考えられる話だ.
by nanamisuzuka
| 2017-02-23 17:36
| 動物の分類や分布・飼育など