2014年 11月 14日
外来魚とは何ぞや |
11月13日付朝日新聞福井版の記事.福井県庁の堀の工事のため,水を抜いた後,そこにいた魚たちを捕獲した.捕れた淡水魚のうち,コイやフナ,ヌマチチブは工事区間外の堀に移し,外来魚のブルーギルは駆除した,と言うのが記事の内容である.
仮に自分がバス釣り雑誌の編集者だったら,この記事を読んで小躍りして喜ぶことだろう.まず,雑誌に「福井県は県庁堀のコイを在来魚と考えているようだ.生態系保全のため,県はブラックバス駆除を進めると言うが,県庁の科学的知識はこの程度の低いものである.よって,バスが湖沼の生態系に悪影響を与えているとの県の言い分は全く信用できない」と書く.そして,県庁宛に「県庁はコイを在来魚として扱っているのですか?」と公開質問状を送り付けるかもしれない.
あえて解説する必要もないだろう.全国の大半の野池にいるコイは国内外来魚である.
今回の淡水魚捕獲作戦は,あくまで工事による魚の緊急避難であって,外来魚駆除は本来の目的ではない.県庁が新聞記者にどう説明したのかはわからないが,少なくとも朝日新聞の記者は,県庁お堀の錦鯉を「在来魚」と理解したようだ.
ブラックバスやブルーギル駆除の際に同時に捕獲されるヘラブナ(注1)やコイの問題については,かつて「ねじればね」に概説文を書いたことがある.自分の考えとしては,地元集落の有志がバス駆除をするならともかく,行政主導の外来魚駆除の場合は,ヘラブナやコイも合わせて駆除すべきである.とは言え,コイやヘラブナを外来魚として殺処分することは,現状では国民的合意を得られているとは思えない.よって,行政主導でブラックバス駆除候補地を選ぶ場合,地元集落がヘラブナの駆除に同意できないような池は後回しにすべきである,と概説文に書いた.この考えは今も変わっていない.
「バスやギルは特定外来生物だ.ヘラブナやコイとは一線を引けるではないか」との主張も可能ではあろう.しかし,自分がバス釣り雑誌編集者なら「あ,そう.ならライギョ(注2)の存在は認めるのですね?」と意地悪く畳みかけるだろうな.
繰り返すが,今回は外来魚駆除事業ではなく,単に工事のためのお魚引っ越し作戦だったから,そう目くじらを立てる必要はあるまい.でも,行政が行うバス駆除事業は,バス擁護派に付けこまれないような施策が必要である・・・・・と,今度,県の環境審議会で話題にしてみるか.by 福井県環境審議会野生生物部会長より
注1)ヘラブナの正式和名はゲンゴロウブナ.本来の生息地は琵琶湖・淀川水系のみだから,他地域の池にいるヘラブナは全て外来魚と考えて差支えない
注2)ライギョは特定外来生物ではなく要注意外来生物である.世界の侵略的外来種ワースト100の一種であるコイと,どっちが「ワル」かは判断が分かれるところ.福井県あわら市北潟湖およびその周辺は,日本に残された数少ないライギョ釣りのメッカであると聞いたことがある.実際,5,6年前にあわら市のため池で水を抜いてバス・ギルを駆除したところ,40cm級のライギョが出てきてびっくりしたことがある.
by nanamisuzuka
| 2014-11-14 18:49
| 環境保全関係