2015年 07月 29日
安保法案について思うこと |
現在,安保法案反対とのプラカードを持ってデモをしている方々は,「戦争絶対反対.今回の法案は日本を戦争へと追いやる.すべて話し合いで解決すべきだ」と主張する.
誰だって戦争なんかしたくない.これは安保法案の賛成反対両方の人々の共通の結論のはずだ.つまるところ,両者の見解の相違は,日本が集団的自衛権を行使できるようにする=防衛力を高めることで,1)周辺国家を刺激し,かえって戦争のリスクが高まる,2)周辺国家が日本に手出ししにくい状況になり,戦争のリスクが小さくなる,の2つの将来予想のうち,日本はどちらになるかを論争しているわけである.
外交は相手のあることだ.したがって,100%正しい予想なんぞできるはずがない.結局,どちらの可能性が高いかを判断して,国の方針を定めるしかない.
プラカードを持って「国と国との意見対立は話し合いで解決すべきだ.安保法案絶対反対!!国民を戦場に送るな!」と主張されている方々が正しいかどうかは10年後の世界を見て判断したい.
クリミヤ半島をウクライナから強奪したロシアに対し,欧州諸国は経済制裁を加えながらも,軍事行動には出ていないのだから,話し合いで解決を目指していることになる.中国の力による南シナ海実効支配強化に対しても,東南アジア諸国は武力ではなく協議で解決を図ろうとしている(戦争しても中国に勝てるわけがないから).仮に10年後にクリミヤ半島がウクライナに返還され,南シナ海の領土紛争が大半の関係諸国納得の上で沈静化していれば,安保法案反対のデモをされている方々の主張(=話し合いで解決できる)が正論だったということになろう.その場合は,現在の与党政治家に謝罪させ,有権者は選挙で彼らをみんな落としてやればよいのである.
一方,上記の紛争が10年,20年後も全く解決していなければ,「話し合いで国際紛争は解決できる,解決すべき」とのデモ隊の主張は幻想に過ぎない,ということになる.世界情勢は今後どうなりますやら.もっとも,クーデター規模の政変が起きないかぎり,ロシアがいったん手にしたクリミヤ半島を手放すとは思えんけどな.デモ隊の方々は,ウクライナ情勢や南シナ海の現状をどう考えているのか,知り合いがいれば聞いてみたいところである.
昨今,安保法案反対運動をしている各地の大学生の主張の中で気になることがある.それは,「自分たちから戦争を仕掛けなければ,絶対に戦争にならない」との信念である.彼らには,この本を読む事をお勧めしたい.『繁栄と衰退と.オランダ史に日本が見える』である.
かつて世界の七つの海を支配したオランダは三度の蘭英戦争に敗れた.また陸続きの大国フランスに攻め込まれ,国土は蹂躙された.オランダは戦争をしたかったわけではない.平和裏に経済活動に専念し,全ての国にいい顔をしようとしていたのだが,戦争を仕掛けられた.結果は周知のとおりで,オランダは経済大国の地位を失った.
かつてのオランダと同じく貿易立国の日本は,今一度オランダ衰亡史から学ぶべきことがあるはずだ.
by nanamisuzuka
| 2015-07-29 18:47
| 時事ネタ